元三菱社員が解説。三菱UFJが「時価総額日本一」になった理由

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「日本で最も時価総額が大きい企業は?」

こう聞かれたら、トヨタ自動車やソニーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

ところが現在、大きな存在感を見せているのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)です。

「銀行がそこまで評価されているの?」そう感じる人もいるでしょう。

銀行といえば、預金を集めて企業や個人にお金を貸す。そんな昔ながらのビジネスをイメージするかもしれません。しかし、日本では長く続いた超低金利の時代が終わり、金利のある世界へと大きく変化しています。

そして、この変化の恩恵を大きく受けている企業の一つが三菱UFJです。

私は以前、三菱UFJグループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券で働いていました。今回はその経験も踏まえながら、「三菱UFJは何がすごいのか」「なぜ金利上昇が追い風になるのか」「今後も投資対象として魅力があるのか」の3点から考えてみます。


目次

三菱UFJは「銀行」だけではない


まず知っておきたいのが、三菱UFJは単なる銀行ではないということです。

銀行だけでなく、証券・信託・カード・資産運用などを抱える巨大な総合金融グループです。そして何より強いのがその顧客基盤。個人口座は約3,300
万口座、法人顧客は約100万社にのぼり、企業のメインバンク調査でも長年トップクラスの存在です。

私が三菱UFJモルガン・スタンレー証券にいたときにも感じていましたが、特に大企業や富裕層との取引基盤は大きな強みです。

金融機関の収益というと、「ATMで数百円の手数料を取っている」といったイメージがあるかもしれません。もちろんそれも収益源ですが、大手金融グループの強みはそれだけではありません。

企業の資金調達やM&A、証券ビジネス、富裕層向け金融サービスなどでは、1件の取引で非常に大きな手数料が発生することもあります。三菱UFJはこうした大企業・富裕層ビジネスに強い。これが非常に重要なポイントです。

実は利益の半分以上が海外

さらに注目したいのが海外事業です。

元原稿で使用した資料では、利益構成は「国内44%・米州35%・アジア16%」となっています。つまり、国内銀行というイメージとは違い、利益の半分以上を海外で稼ぐグローバル金融グループなのです。

特に米国ではモルガン・スタンレーとの資本・業務提携を通じ、投資銀行や資産運用など幅広い金融ビジネスを展開しています。

三菱UFJを見るときは、「日本最大級の銀行」ではなく、「国内最大級の顧客基盤と海外で稼ぐ力を持った総合金融グループ」と考えた方が実態に近いでしょう。


なぜ金利上昇で銀行株が注目されたのか

ここからが今回の本題です。三菱UFJの株価が大きく評価された背景にあるのが、日本の金融政策の転換です。

長期間にわたって日本では超低金利政策が続いていました。これは銀行にとって非常に厳しい環境でした。

銀行の基本的なビジネスモデルは、預金などで調達した資金を企業や個人に貸し出し、その「金利差」で利益を得ることです。ところが金利が極端に低ければ、この利ざやを確保するのが難しくなります。

逆に、金利が上昇すると状況が変わります。例えば貸出金利が0.5%から1.0%になったとしましょう。「たった0.5%?」と思うかもしれません。しかし、何十兆円という資金を動かす銀行にとって、この0.5%は非常に大きなインパクトがあります。

実際、元原稿で参照したMUFGの資料では、金利上昇による利益押し上げ効果として、2025年度に約1,500億円、2026年度にも約1,700億円のプラス効果が想定されていました。

市場金利が変化するだけで、これだけ利益への影響が出るわけです。その結果、営業純益や親会社株主純利益も大きく拡大しました。

市場から見た銀行のイメージも、「低成長産業」から「金利正常化によって利益成長が期待できる業種」へ変わってきたと考えられます。これがMUFGの企業価値が大きく評価されるようになった重要な理由です。


今から三菱UFJに投資するのは遅い?

では、株価がすでに大きく上昇した三菱UFJに、今から投資する価値はあるのでしょうか。

私は、長期的に見るのであれば、十分に検討対象になる企業だと考えています。理由は大きく3つあります。

「金利のある世界」は始まったばかり

一つ目は、日本の金利正常化です。今後さらに金利が上昇すれば、銀行の収益環境が改善する可能性があります。

もちろん「金利上昇=銀行株上昇」という単純なものではありません。景気悪化による貸し倒れの増加や債券価格の下落など、金利上昇によるマイナス要因も存在します。

それでも、長年続いた超低金利環境からの転換は、銀行業界を考えるうえで大きな構造変化です。

株主還元にも積極的

二つ目が株主還元です。MUFGは配当を増やしてきただけでなく、自己株式取得も実施しています。

銀行株はもともと「配当株」として見られることも多いですが、「利益成長+増配+自社株買い」という組み合わせが続けば、長期投資家にとって大きな魅力になります。

日本だけに依存していない

そして三つ目が海外事業です。三菱UFJは国内だけでなく、米国やアジアでも事業を展開しています。

日本経済だけに依存せず、世界の金融市場から利益を獲得できる。これは国内銀行の中でも大きな強みだと思います。


元社員として一番後悔していること

ここで少し個人的な話を。

私が三菱UFJグループにいた頃、持株会を利用して株を保有していました。しかし当時はマイナス金利の真っただ中。銀行株はなかなか評価されず、株価も思うように上がりませんでした。

そのため、私は途中で手放してしまいました。その後の株価上昇を見ると、「ずっと持っていれば……」と思うことはあります。

ただ、これは投資ではよくある話です。重要なのは、「昔買っておけばよかった」ではなく、「今後、その会社の利益がどう変化するのか」を見ることだと思っています。

株価が上がったから買う、下がったから売るのではなく、その企業を取り巻く環境がどう変化しているのかを見る。三菱UFJの場合、その大きな変化が日本の金利正常化なのです。


まとめ|

三菱UFJが大きく評価されるようになった背景には、単純に「金利が上がったから」という理由だけではなく、巨大な顧客基盤、法人・富裕層ビジネス、海外収益、金利正常化、株主還元といった複数の要素があります。

特に重要なのは、これまで銀行の収益を圧迫していた超低金利環境そのものが変化したことです。

もちろん、ここまで株価が上昇している以上、今後も同じペースで上昇するとは限りません。金利動向や景気、海外事業の収益、株主還元などを継続的に確認する必要があります。

それでも、「日本の金利正常化」というテーマに長期で投資するという視点では、三菱UFJフィナンシャル・グループは今後も注目しておきたい企業の一つだと考えています。

※本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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